トルストイの民話「人にはどれほどの土地がいるか」。「起きて半畳、寝て一畳」。

もしの話ですが、あなたが、こう言われたら、
どんな行動をとりますか?

「1日歩いただけの土地を与えよう。
但し、日没までに、ここに戻ってこないといけないが」。

あなたは、朝早くから起きて、必死に駆け出すかもしれません。
日は高く昇る。
出発地点からどんどん遠ざかっていく。

日は西の方に傾いていく。
日没までに帰らないといけないとすれば、
どの辺りで、引き返せばいいのだろうか?

少しでも遠くまでいけば、
そのぶん、自分の土地になる。
しかし先まで行きすぎて、戻れなければ全部パー。

悩ましいですね。

自分は小心者なので、おそらく相当な余裕を持って、
出発地点に帰ると思います。

2012年12月31日、毎日新聞。山田孝男さんの《風知草》で、
言語社会学者・鈴木孝夫さんの本
「人にはどれだけの物が必要か」の中の、
トルストイの民話「人にはどれほどの土地がいるか」を紹介しています。

トルストイの話は、1日歩いただけの土地を
1000リーブリ(ルーブル)で譲る。
ただし日没までに戻ることという条件つき。

パホームという小作人が、土地を買い増していき、
パシキールという土地で、上のような話に出会い、
遠くまで歩いて行くのですが、日没に間に合うように、
必死で戻ったせいか、帰るなり、血を吐いて死んでしまいます。

下男は、穴を掘って彼を埋葬。
その穴の大きさだけの土地が、
彼に必要な土地のすべてだった
という落ちで終わります。

このロシアの民話と同様な話はいくつもあって、
1日馬で駆け巡った土地はお前のものと言われた者が、
欲をかいて走り回り、馬が死に、わずかな土地も
得られなかったとか、上のように本人が死んでしまった
などの話が、伝えられています。

「欲をかいてはいけない」という教訓話ですね。

また日本では、
「起きて半畳寝て一畳」と良く言われます。

起きて読書に使う空間は畳半分で十分、
さらに寝る時には畳一枚分あればいい。
すなわち、過度な欲望を戒め、清貧を旨とすべし
との教えですね。

自分が小さい時に父から教わったのは、
さらに後ろがついていて、
「起きて半畳 寝て一畳 天下取っても 二合半」
でした。

二合半は、ご飯もしくは酒。
言ったのは、織田信長とされていますが、
豊臣秀吉との説もあるようです。

ともかく、欲望には限りがないが、
人が生きるのに必要なスペース、
また食欲を満たす量は限られている。
「足るを知りなさい」ということよう。

こうした境地に達することができれば、
幸福を感じることができるのでしょう。

そこまで達することができるのかなー?

追記 2023年1月15日
〇このエントリーにアクセスが集まっています。
 大河ドラマで徳川家康をやっているせいか、
 思いだしたのは、内藤新宿。
 新宿御苑はじめ、あの辺り一帯はすべて
 家康から拝領した内藤家のものだったんですね。

 (上でも少し書いていますが……)
 《大木の下で休憩していた家康が、「この一帯を馬で一息に駆けてみろ。
 駆けまわってきた土地はぜんぶお前にやろう」と清成に言ったそうです。
 清成は愛馬にまたがり、四谷、千駄ケ谷、代々木、大久保とまわって、
 家康のもとに駆け戻ってきました。愛馬は力尽きて死んでしまいましたが、
 清成は駆け抜けた広大な土地をもらいました。》
 《内藤家18代目当主「鷹狩りで新宿に来た家康が2代目に命じ、できた“駿馬伝説”」
 2015/02/22 11:30》
https://dot.asahi.com/wa/2015021900072.html?page=1


人にはどれだけの物が必要か: ミニマム生活のすすめ (新潮文庫)


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